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もう 私に 笑いかけないで




「ねぇ」

「ん?」

事の始まりは、二ヶ月前のある日の教室で起こった。
それが起こったのは、俺がただ過ぎ行く日々を、ありのままに楽しめていた中の一日。
その一日が、時間の上で半分程終わりかけた昼休みだった。
彼女が話しかけてきた。
いつもの笑顔がどこにも見えなかった。
彼女は、少し困ったような表情で、

「彼って・・・彼女とかいるのかな」

そう言った彼女の視線の先を辿った。
そこには友人達と談笑している一人の男子生徒の姿があった。

その時俺は確信した。

彼女には、好きな奴がいるのだと。








=Like the Sun=








何で俺に相談してきたかは訊かなかった。
こういう事は、男子は男子、女子は女子に相談するものだと、何故か俺はずっと思っていた。
実際のところ、そんなのは状況次第だって、考えてみればすぐにわかるのに。
彼女の場合、俺がクラスの男女誰とでも話せるからとか、幼なじみだからとか、そんなところだと思う。

そんな事はどうだっていい。

少なくとも、彼女の好きな相手が自分じゃない、ということだけは、確かなのだから。




紆余曲折を経て、彼女と彼は晴れて恋人同士となった。
正直、複雑な気分だったけど、一応、笑ってやれたと思う。

俺は二人の――いや、彼女のために、いろいろと動いた。
それでも、元々人気のある彼女だ。そこまで辿り着くには、そう時間はかからなかった。
彼の方も、以前から彼女に対して恋愛感情のようなモノはあったらしい。
なにしろ、告白をしたのは彼女ではなく彼の方だったのだ。
相思相愛と言うヤツだ。

彼女のことを好きでもない奴と付き合うよりは良い。
ずっと、良い。

そもそも、なんで彼女の恋を応援したかというと、簡単な理由しかない。
彼女の困った顔を見たくなかったから。
彼女の笑顔をまた見たかったから。

つまるところ、俺は昔・・・そして今も、彼女のことが好きなんだ。








そして今日。
彼女と彼が付き合い始めてから数週間が経った日曜日。
怠惰な一日を俺の家の、俺の部屋の、俺のベッドで謳歌していた。
するとインターホンが鳴った。
今、この家には俺以外には誰もいない。

「無視だな」

俺は居留守をしようと思った。
しかし、再びインターホンが鳴る。
今度は二回、連続で。
そして次は三回連続
訪問者が誰なのか判った。
嫌でも判る。
それなのにどうして俺は、玄関のドアを開けようとしているのだろう。
俺は、まだ会いたいと思っているのだろうか。
もっとも、目の前のドアを開ければ、どうしたって、目に入るのだけど。

「何しに来たんだよ。日曜の昼に」

俺の正直な感想だった。
面倒なやつが来た、そう思った。
彼女の顔を見たくなかった。
まっすぐ彼女の顔を見られそうになかった。

彼女はきっと、いつものような笑顔を俺に向けるんだ。

「私、暇。アンタも暇そう。実際暇でしょ?」

彼女はそう言い放つ。
学校で見せる優等生のような姿からは想像しにくい。
何もあれが彼女の本性、というわけじゃない。
彼女の一面にすぎない。
学校の中で知っているのは、俺ぐらいなのかもしれないけど。

「おじゃましまーす」

「お、おい。勝手に入るなって」

「あれ?おばさん居ないの?」

「そうだよ。・・・って、だから何、勝手にあがりこんでるんだよ」

「先に部屋行ってるから。何か飲み物持ってきてね~」

「ったく・・・」

結局、勝手知ったるという感じに階段を上っていく彼女を見送ってしまった。

「だから、今は俺とお前だけなんだよ・・・」

呟いて、俺はドアを閉めた。




「ほら」

お茶と適当にお菓子をトレイに載せて、俺は自分の部屋へ戻った。
彼女は来る途中にでも寄って来たであろう、コンビニの袋から出したマンガ雑誌を、ベッドにもたれかかりながら読んでいた。

「サンキュ」

小さなテーブルの上に俺がお盆を載せると、彼女はそう言った。
俺は自分の机のイスに座る。

「それ、買うの止めたんじゃなかったのか?」

『それ』とは、彼女が読んでいるマンガ雑誌のこと。
確か以前借りようとした時に、そう言われた気がした。

「良いじゃない。個人的な趣味よ」

「彼氏は知ってるのか?」

「・・・・・・」

無言の返答。
小さな笑いが、俺の口からこぼれた。

「何か文句でも?」

少し怒りを含んだ口調。

「何でもねぇよ」

「そう?」

大して気にした様子もなく、会話を終わらせた彼女は、再び雑誌を読む事に集中した。

そう。
何でもない。
大したことじゃない。
ただ少し、優越感に浸れただけ。

最後にこんな気分を味わえるなんて、俺はきっと運が良い。




「なぁ」

「何?」

彼女は読んでいた雑誌から視線を外し、こちらに向ける。

「読みながらでいいよ。そんな大した話じゃないから」

「そう?」

少し前、俺の事を『明るい人間』だと言った奴がいた。
『太陽みたい』だと。
けど、それは違う。
『太陽』は俺じゃない。
もし、俺が本当に『太陽』みたいに明るいのだとしたら、それは俺が『月』だったからだ。
太陽の光をその身に浴びて輝く、月だったんだと思う。

「あー。でも一回しか言わないから、ちゃんと聞いとけよ」

ずっと前、まだ俺と彼女が一緒にいた頃、彼女は俺の太陽だった。
彼女はいつも笑顔だった。
いつも俺のそばにいてくれた。

だから、それがいつまでも続くモノだと思っていた。

「りょーかい、りょーかい」

だけど違った。
もう十分だ。
太陽の光は、十分過ぎる程に浴びた。
そろそろ他の奴に、『月』の役を渡すのも悪くない。
例えば太陽が愛する人間に。
それが、この数週間の、ほとんど全ての時間を使った俺の考え。

「あのさ」

後ろ向きだとか、逃げだとか、俺は何を言われても構わない。
俺は、俺が好きな彼女の幸せを邪魔したくないだけだ。
だから、これが一つの答えであると信じている。

そう信じたい。

「うん?」

そう。
それは決して、悪い事じゃないと思う。

ただ少し、悔しいだけだ。

「もう俺に、笑いかけるなよ」

それで俺の好きな彼女が幸せになるのなら、決して、悪くはない。
悪くは、ない。

悔しいだけだ。

辛いだけだ。




これは、太陽のために太陽から離れた、少し寂しい月の話。







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