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恋せよ 一度も傷ついたことがないかのように。




「お腹空いたー」

ある日の夕方。
そろそろ夕食の準備でも、と思い立った矢先のチャイムの音。
それに呼ばれてドアを開ければ、そこには食欲を全面に押し出した金髪の少女がいた。

「帰れ」

確か前にも似たような光景に遭遇したような・・・。
そんな既視感が、ろくでもない展開を示唆してる気がしてならない。
俺はなんとしてもそれを回避するためにドアを閉めようとした。
が、

「そうはいかないですぜ、旦那」

なんと彼女は隙間に自分の体を入れて、ドアが閉まらないようにした。
その動きがあまりにも早く、俺は全く対応出来なかった。

「・・・お前はいったい何がしたいんだ?」

そんな事をされてはさすがにドアを閉めるなんて出来ない。
ため息を一つ。右手をドアノブから離して腕を組み、俺はその行動に飽きれながら言った。
とりあえず、彼女を門前払いにする事は不可能らしい。
せっかくのまったりゆったりの休日だったというのに、どうやら今日という日は平穏無事には終わってくれないらしい。

「そんなことしたら危ないよ?」

そんな事を思っていた時、俺と彼女以外の声が聞こえてきた。
目の前ばかりに気を取られていたが、後ろに少女がもう一人隠れていたのだ。
と言うよりは、見えなかったと言うべきか。
この二人、多分20cmぐらい身長差があるからな。無理も無い。
・・・って言ったら怒るかな。身長が低い事、気にしてるみたいだったし。
俺としては、可愛くて良いと思うんだけどな。

「どうかしました?」

「え?・・・ああ、いや、何でもない」

もしかして俺は今、彼女を見つめてたのだろうか。
無意識でっていうのは、さすがに恥ずかしいな。

「可愛いなー、とか思って見とれてたんじゃない?」

「えっ!?」

「なっ・・・!?」

あまりにも的を射た発言。
普段何も考えてないような感じのくせに、急に鋭い発言をするな、こいつは。
視界の端に見えた恥ずかしそうに赤らめた彼女の顔。
単に恥ずかしいのか、それとも俺を意識してくれているのか・・・まあ、前者だろうな。
咳払いを一つ。落ち着こう。
何とか話を違う方向に持っていこうと、俺は二人に話を振った。

「・・・で、本当に何しに来たんだ?」

「お腹空いたー」

「お前は黙ってろ」

振り出しに戻りかねない発言に、俺は容赦の無い言葉を浴びせる。会話が進まない。
しかし、ここに来てから「お腹が空いた」と言ったのは2回目だ。
と言う事は、何か食べ物をよこせ、と言う事なのだろうか。
・・・思い出した。
さっきのは既視感なんかじゃない。実際に数週間前にあった光景だ。
しかし今回は何故二人で?
何はともあれ確認のために俺は口を開く。
もちろん、金髪の方ではなく、左右の髪に×の字の形の髪留めをしている少女の方に対してだ。

「実は・・・」

彼女の話をまとめるとこんな感じだった。
日も暮れようとしているこんな時間に行われているガスの点検と修理で夕飯が作れなくなっている事。
金髪少女の金欠のせいで外食が出来ない事。
アパートの一階に住んでいて同じ状況にいるはずの二人は、朝から千葉浦安ねずみ園に行っているらしい事。
相変わらず好きなんだな、ねずみ園。
脳裏に浮かぶのは、眼鏡をかけた同級生。
確か年間パスだかなんだかを作って、暇があれば行っているとかなんとか・・・いや、好きなのはあいつじゃないな。誰だっけ?
それに、あの二人の組み合わせなら、どちらかといえばあっちの提案だろうな。
次に思い浮かべるのは、頭の左右をお団子にしているこれまた同級生。
二人の同級生を比べると、そっちの方が自然な気がした。
それはともかくとして、詰まるところ、彼女達には今夜の食事の目処がたたないらしい。

「なるほど、ね」

それで以前食事を作ってやった俺のところに来た、と。
あのアパートとそれなりの付き合いがある俺には、納得せざるをえない話だった。
もちろんそんな状況ならば、俺だって助ける事にやぶさかではない。

「とりあえず中に――」

「にゃんこせんせー!」

俺の言葉を遮って部屋の中に突入していく金髪少女。
廊下を走り抜け、部屋のドアを開けて入っていく。
次の瞬間から聞こえる我が飼い猫の鳴き声には、同情を禁じえない。
前にあいつが来た後、何かに怯えてたからなぁ。

「にゃんこせんせい?」

「俺が付けたワケではないけど、名前が変わってるのは飼い主の俺が一番知ってるよ」

「でも可愛いですね」

そう言って彼女は微笑んだ。
比べたわけではないけれど、俺は彼女が可愛いと、そう思った。
覚えていたいと、そう思った。

「お腹空いたー」

・・・もしかして、また見つめてたのか俺は?
無意識の行動って、疲れてるのかな、俺。

「お前はそればっかりだな」

また余計な事を言われる前に夕飯の話でこの空気を濁してしまおう。
うん。それが良い。

「しかし俺も準備をしようとしていたところで、まだ何も出来てないぞ」

「え!?何で!?」

「・・・お前、人の話聞いてないだろ」

俺の発言を全く聞いていなかった事に呆れながらも、簡単に出来るメニューを考える。
とりあえず時間稼ぎに野菜と肉でも炒めるか。確か冷蔵庫に使いかけがあったはず。
それに冷凍してあるご飯を温めて――

「おぉ、秋刀魚だ」

「勝手に冷蔵庫を開けるな!」

「秋刀魚が食べたいなー?」

「時間がかかるけど、それでも「違うモノをお願いします」」

「・・・はいはい」

「私も手伝います」

「助かる」

「私も手伝いますぜ」

「にゃんこ先生がお前の事を呼んでたぞ」

「にゃんこせーんせー」

あいつをキッチンに立たせるな、という俺の直感通りに遠ざけてはみたけど、我ながらあいつの扱い方が上手くなったような気がするな。
にゃんこ先生の夕飯はグレードを上げておこう。秋刀魚もあるし。
俺は君の犠牲を忘れない。
部屋のドアが閉まり、小さな台風が去ったのを確認して、俺は冷蔵庫から材料を取り出し始める。
ご飯は後で温めるとして、茶碗が足りないな。何か適当なのがあったかな。
準備をしながら、今後の段取りを考える。

「とりあえず人参を短冊切りに、キャベツは適当な大きさで」

「わかりました」

野菜を任せると、俺は鶏肉を一口大に切る。
中華鍋に油を敷いて、肉に火を通し、切ってもらった野菜を入れる。
玉ねぎも入れるか。
あ。しめじも買ってあったな。
ついでに酒とにんにくを入れ、醤油で味付けをする。

「・・・どうした?」

先ほどから感じる視線。
目線をそちらに向けてみれば、彼女がこちらを見ていた。

「中華鍋を振ってる人を初めて見ました」

何故だか軽い尊敬の眼差しで見られている気がする。
悪い気はしないけど、簡単に出来る事なんだけどな。
彼女に振らせるたら、危なっかしくて見てられなくなりそうだけど。
期待に応えて振ってみる。
野菜と肉が宙に浮かび、そして鍋に戻ってくる。
反応が面白くて、つい意味も無く繰り返してしまう。

「料理、上手なんですね」

「ん?いや、これは火を通してるだけだから。上手いわけじゃない」

「そうなんですか?」

「煮物とか、他の料理だったら、お前の方が上手いよ。きっと。今度教えてもらおうかな」

「いいですよ」

思考が停止する。
今、俺は何て言った?
今、彼女は何て言った?
何故俺はあんな事を言った?
・・・ああ、そうか。
それなら納得がいく。
今日の自分にも、昨日までの自分にも。
俺は彼女の事が――

「ごはんー!」

匂いにつられて舞い戻る台風。
相変わらずのタイミング。
何だか驚くのも面倒になってきて、むしろおかしくて、俺は自然に笑っていた。

「?」

「何でもないさ」

不思議な顔をしてこちら見ていた彼女に、俺はそう言った。
そう。何でもない。
今まで通り。いつも通り。

「ちょうど出来たところだ」

「おー。おいしそー」

「そっちに持って行くから、テーブルの上を片付けといてくれ」

「りょーかーい」

敬礼のポーズをしてそう言うと、彼女は部屋に戻って行った。
そうだ。この機会を作ってくれた彼女に、ささやかなお礼をする事にしよう。
包丁とまな板を洗って、俺は冷蔵庫から秋刀魚を取り出した。
今ならどんな言葉よりもずっと価値がありそうだ。
もっとも、感謝の言葉なんて恥ずかし過ぎて絶対に言えないのだけど。

「これ、先に二人で食べといてくれ」

「わかりました」

皿に盛った野菜炒めと二人分の箸を載せたお盆を渡す。

「あ、そうそう」

部屋へ向かおうとした彼女を呼び止める。

「はい?」

「さっきの約束、楽しみにしてるから」





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